第5章 Fight
二週間後、早くも体育祭の日がやってきた。この日のためにトレーニングして、お肉お魚、豆野菜…何でも好き嫌いせず食べまくった。糧は私の血肉となり、健やかな綿となるのだ!
体育祭、絶対最後までやり遂げてみせる。もしかしたら、私を救ってくれたあのヒーローも見ているかもしれない。
「燃えてるわね、まりちゃん」
「燃えてるよー!頑張ろうね梅雨ちゃん」
静かな緊張感の漂う控え室で、強く拳を握った。控え室の扉を勢いよく開けた飯田くん。彼のじきに入場だという言葉に緊張もピークを迎える。
「緑谷」
そんな中、轟くんの緑谷くんを呼ぶ声に皆がそちらに目を移す。轟くんがクラスの人と関わるのは珍しい事で、それもただならぬ雰囲気。あの爆豪くんも様子を伺っていた。
「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」
瞳に戸惑いの色を浮かべる緑谷くん。轟くんがオールマイト先生の名を出すと緑谷くんは微かに肩を揺らした。
「詮索するつもりはねぇが、お前には勝つぞ」
鋭い眼差しを向ける轟くんを切島くんがなだめたが、それを冷たくあしらって彼は皆に背を向けた。
固唾を飲んで様子を見守っていると緑谷くんはゆっくりと口を開いた。客観的に見ても自分は轟くんには適わない。だけど皆トップを目指して頑張っているんだ、と。
私は緑谷くんの瞳に宿る強い光に目を奪われた。いつもおどおどしているけれど、真っ直ぐにヒーローを目指すその姿は私の憧れるヒーローにどこか似ている。私も、負けていられない。
「僕も本気で獲りに行く」
雄英体育祭が、今、始まる。