第3章 Declaration
「皆さん、待ってましたよ!」
バスを降りると白い宇宙服に似たスーツを纏った──
「スペースヒーロー13号だ!」
「うわあ!私好きなの、13号!!」
思わぬヒーローもとい先生の登場に歓喜の声が上がる。もちろん私もそのうちの一人。特殊な個性を活かしたヒーロー活動には憧れているし、なにより丸っこいフォルムが可愛い。触ったらふわふわしそう、なんて授業中に不謹慎なことを考えてしまった。
先生達に続いてドームの中に入ると、そこには数々の事故や災害を想定した訓練場が広がっていた。とにかくとても広い。さながら1日では回りきれないテーマパークのよう。ここは『USJ(ウソの災害や事故ルーム)』…というらしい。
ゆーえすじぇーって大丈夫なのその名前?雄英って変なとこ肝が据わってるというかなんというか。まあ覚えやすいからいい……のかな?
13号先生の話が始まると皆真剣な表情で彼の話を聴く。私達の持つ個性は人を助ける為のモノ。だけど、簡単に人を殺せるモノでもある。
私の個性だってそうだ。制御出来なければ守るべきものすらも傷つけてしまう。──そんなことはあってはならない。制御、できるようにならないと。この力は絶対、他を助ける為に使うんだ。
13号先生の素晴らしいお話に拍手が湧き上がる。私も大きな拍手を送った。
「よし、そんじゃまずは……」
相澤先生の言葉にいざ、救助訓練開始かと思われた。
しかし突如流れた不穏な空気。私は身を構え辺りを警戒する。この感じ、知ってる。忘れることは無い──敵意、悪意。じわりと額に汗が滲む。
「一塊になって動くな!13号、生徒達を守れ」
噴水広場の前に現れた黒い靄。その中から覗く瞳に身の毛がよだつ。そこから、一人また一人と続々現れる人達。ああ、この人達、みんな……。
「なんだありゃ?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「だめ!あれは……」
「ヴィランだ」
私が一歩踏み出した切島くんを制止すると、相澤先生はゴーグルを掛けながら言い放った。皆に動揺と緊張が走る。なぜ、ヴィランが学校の施設に?そして、この数……何が目的?
とてつもなく嫌な予感がする。私は瞬きも忘れて謎の集団を見据えた。