第3章 Declaration
「なあ、やっぱ綿世って轟のこと好きなん?」
「何を言ってるの。上鳴くんまで」
爆豪くんの話はどうした?爆豪くんまだなんか吠えてるけど無視なの!?突如として上鳴くんに振られた恋バナ──横に本人いる──に苦笑を返す。
「よく轟のこと見てるからさ」
「えっそうかな?見てる?」
窓の外に目をやったまま頷く轟くん。そうか、見てるのか私。
だけど、その行為を恋愛と結びつけるのは短絡的だと思う。そりゃ、好きか嫌いかならば、好きだ。でもそれは轟くんに限った話ではない。この“好き”は恋とか愛とかそんなものではないと思う。
なぜなら恋をすると、どきどきしたり切なくなったり、独占したくなったりすると少女漫画が言ってたから。
「綿世……?」
「あっ、ごめん」
「や!じっと見られるとなんか照れるっつーかなんつーか!」
上鳴くんの事を見ながら物思いにふけってしまっていた。上鳴くんのほんのり赤くなった顔にはっとして俯く。
私、人の事見ながら考え込んでしまうんだ。思い返せば確かにそういう事が多い……あまり良くない癖だ。
動揺と羞恥で熱くなる頬を手で冷ますように押さえたけど、そんなに冷たくなかった。いつの間にか足元に綿が転がっていた。
「とっ、ところで綿世!今度飯いかね?」
「おいコラ無視してんじゃねェ!殺すぞ!」
「君たち、静かにしたまえ!」
飯田くんが上鳴くんと爆豪くんを制する。当然、静かになるはずもなく、爆豪くんは飯田くんを罵りだすわ上鳴くんは再び爆豪くんを弄りだすわで騒々しいことこの上ない。私は溜息ひとつ零して、まぁこんなのも悪くないのかなと笑った。
「着くぞ!いい加減にしとけ!」
相澤先生の一言に皆一斉に大きな声を返すと、間もなくしてバスは大きなドーム状の施設の前に停車した。
バスが止まるとまず相澤先生が降車して、それに生徒達も続く。私はさりげなく落ちた綿を拾いショートパンツのポケットにしまった。そうして何事も無かった顔でバスを後にした。
轟くんにはばっちり見られてしまったけど……。