第8章 過剰摂取
気付けばソイツはアフタヌーンティーにたっぷりと注がれ、そして目の前に出てきた。
入れた本人もそれを一口飲んだ。
「おい」
「はい…?」
「ガキ、ソイツはどこに置いてあった」
「厨房のカウンターに…」
アフタヌーンティータワーが運ばれ、クソガキはよくわからないという顔をしながらいつも通りに取り分けをする。
「凄くいい香りのする蜂蜜ですね…」
皿を配膳するといつものようにまた一口紅茶を飲み、笑いやがった。
「これは酒だ」
「…?」
「そのまま舐めてみろ」
苛立ちから指に一掬いすると奴の口に突っ込んだ。
「っ!?」
躊躇ってから口にふくまれた甘い物をこくりと飲み込み、あまりに強いアルコールに噎せる。
「けほっ!な、なんですかこれ!?」
「蜂蜜酒だっつてんだろうが」
「あ、あつい…」
「そりゃそうだ」
たった一口で酔ったのか、呆れながらベッドへと投げる。
水差しの中身が交換されていることを確認してからそれをグラスにうつして飲ませた。
「面倒くせぇ」
「す、すみません……」
体内のアルコールがこれで薄まればいいが。
ガキには些か強すぎたであろう。
脈がドクドクと音を立てている。
暑いだろうと羽織を脱がしたところで、なんでこの俺がガキにこんなことしているんだと腹が立った。
「コキ使ってから干からびさせてやる」
「ごめんなさい」
何回目かの謝罪の言葉を聞いたがまた繰り返されそうだ。
潤んだ瞳に小首を傾げられ、完全に悪さした子犬を彷彿とさせる。
しかし、反省の色は薄いように思う。
再三甘やかしてきてしまったせいかもしれない。
仕置きだ、とわざと低く言えば、腰を震わせる。
短期間で随分物分かりがよくなったものだと感心した。