【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第93章 〝私〟について(その1)
しばらくして安室さんが到着した。
タッパーに料理を詰めて、お酒も持参して。
人当たりの良い笑みはどこか嘘っぽくて――会いたかったと思うと同時に感じる嫌悪感。
それが、私の感情の違和感。
「改めてお前との思い出を人に話すことなんてなあ」
「実は僕も聞いたことなかったんですよね」
「ボクも!」
「私やお母さんは当時の少し知ってるからね」
「あー、……」
「お母さん、若い子連れ込んでるって怒っちゃって」
……それは、確かに勘違いしそうだ。
「いいだろその話は。……それより○○の話だ。警察官の頃の○○はまっすぐで、生き生きとしていた。当時少しだけ研修で携わったが、……いい警察官になると思ったんだけどなあ」
しみじみとお酒を飲みながら言葉を漏らす姿に、つきんと胸が痛む。
「私は、昔警察官だったんですよね。どうして警察官を辞めたんですか」
向いていなかった、そう私自身も二人から見てもそうだとして――ただそれだけなのか、明確に理由があるのか、そもそも辞めたのはいつなのかとか――
「……同期が亡くなったから、ですね」
「知ってんのか」
「ええ、僕もそれは少し以前の彼女から聞きました」
「仲の良かった連絡を取り合っている同期が全員亡くなったとは聞いた。その話をするときはいつも、覚悟が足りなかったと言い聞かすように言っていたな」
全員。
それが、明確に何人なのか聞く気にはなれなかった。
死と隣り合わせ。
今の私には、想像することしかできないけれど……
「辞めてからのお前を見かけたのは、偶然だった。道端で力無く歩くのを見かけて、声をかけた」
――一年くらい前の出来事。
私は毛利先輩に連絡を取っていたわけではなかったらしい。
本当にただ偶然、過ぎた人が振り返るほどに力無く歩く私を見かねて探偵事務所に連れてきた。
それが、きっかけ。
仕事もなく就活をするでもなく、時間が経過するよう、ただ日々を過ぎるだけのように過ごしていた私に探偵事務所で働かないかと声をかけたらしい。……その時に別居中の奥さんを含めてごたごたあったらしいのだが、そこは蘭さんも苦笑いして話してはくれなかった。
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