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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第89章 もしも、出会わなかったら。


あの日のことに、何も触れなかった。
まるで何もなかったかのように。

──違和感はあった。

でもそれを口にすることはなかった。
赤井さんにすぐにでも連絡をとれば良いのに、……私は何もしなかった。
なぜなら、また、以前のように私を見張る気配を感じていたから。
疑われている。
でもそれを、互いに口にしない。
ひたすら、〝しない〟ことに互いが意識をしていた。

その関係に限界は間違いなくいつか必ずくるとわかっていても、…………でも、離れる以外の手段を浮かぶまで、気づかないふりをすることにしていた。

そして。
私を見張る必要がなくなったのは、はっきり言って「それどころじゃなくなったから」である。
互いに、そのことを後に回した。
いつか向き合わないといけない問題としても、それは今じゃない。


東京サミットが開催される5月1日。


その準備で、私たち公安は、寝る間を惜しむほど忙しく過ごしていた。


そして、
東京湾の埋立地に新設された統合型リゾート。
その中にある国際会議場で、一週間後に控えたその日。
サミット当日は全国から集めた二万二千人もの警察官を都内の警備に当てる。

刑事部、公安部、警備部とサミット前の現場点検を行うことになっていた。
そして、公安部が担当となる今日。

現場は緊張感のある中、それぞれの持ち場の点検を行なっていて。

「清水さん、……何か、匂いませんか」

一階にある日本料亭の厨房は地下。

「○苗字○さん、俺見てくるから異臭の報告をすぐ」
「了解」

匂い。
それは、僅かだった。
僅かだったけど、私にも清水さんにも間違いなく伝わる匂い。
無線で報告を入れようとした時だった。




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