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【名探偵コナン】幸せを願う

第4章 暗転と覚醒


「頭部外傷と左肩の脱臼、腹部には大きめの裂創がありましたが、幸い内臓に損傷はなく、現場での処置が適切だったおかげで後遺症も残らないでしょう」

安心させるように笑みを浮かべる医師に、四人は体から力を抜こうとした。しかしすぐに笑みは消され、医師に同調するように空気が重くなる。

「ただ右足は複合骨折しています。手術で元には戻りますが、これまでのように動くかは本人が目覚めてみないとわかりません」
「…動かなくなるってことですか」
「いえ、動かしにくくなるかもしれないという可能性の話です」

百パーセントではありません。と話す医師の声に、まだ彼女を奈落へ落とすのかと自身への苛立ちに奥歯を噛み締めた降谷の隣で静かに聞いていた修平の前に医師が手術同意書を差し出した。
ゆっくりと上に置かれたペンを握る手は細かく震えている。一度大きく息を吐き出して、書類に目を落とした修平は素早く署名欄に自身の名を記し、続柄の欄に実弟と書き込んだ。







同意書を持ち退出する医師に頭を下げていた修平は自身のズボン、その太腿付近を引く小さな手に顔を上げた。
そこにはメガネを掛けた子供が乾ききった血を纏いながら不安げに瞳を揺らしていた。彼の後ろには同じく血を纏い俯いたまま手を握りしめる少女がおり、悲壮感漂うその姿に修平は思わず膝をついて二人の頭を撫でた。

「…君たちはどうして此処に?」
「彼らは幼いですが知識が豊富で、南海さんの腹部の止血をしてくれたのは彼なんです」

努めて柔らかく出した疑問に答えたのは降谷だった。すっと後ろへずらされた視線はすぐにコナンへと戻り、驚いたように”こんなに小さいのに”と声を漏らした。

「ありがとう。姉さんを助けてくれて」

姉とそっくりな笑みを浮かべる修平にコナンはぎこちなく笑った。

「違うわ!!」

瞬間、後ろで俯いていた灰原の震える叫声が室内に響いた。
白くなるほど握り込まれた手は震え、瞳は溢れんばかりの涙で覆われていたが、修平から逸らされることはなかった。

「助けてなんてない、その逆よ!私たちが米花町に誘わなかったら南海さんは事故になんて遭わなかった!私たちのせいで…」
「…灰原」




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