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わたしは黄桃

第2章 の



スーパーでお買い物。
あれやこれやと買い込んでいるうちに、缶詰コーナーの前まで来た。
私は黄桃の缶詰を家に常備している。この間ひと缶開けたから、また買わないと。
そう思って缶詰を手に取った時、彼の言葉が脳をよぎった。


黄桃とか邪道だよ


カコン、と缶詰が私の手から落ちていった。
「あっ、待って」
転がる缶詰を拾おうと手を伸ばす。
と、私より先に缶詰を拾い上げた人がいた。

「はい、どうぞ」

その人はニコリと笑って私に黄桃缶を差し出した。

「あっ…済みません。ありがとうございます」

慌てて頭を下げ、缶詰を受け取る。
優しそうな男の人だった。年は私と同じくらいだろうか。

「あの…大丈夫ですか?」
男の人は眉をへにょりと八の字に曲げて、私に尋ねた。

大丈夫…って、何が?

「その、何だか元気がなさそうだったので…」
「えっ」
「あ、いや、いきなりこんなこと言われても困りますよね。うわ、何やってるんだろボク。違うんです、あのホラ、よくこのスーパーで会いますよね。だからボクあなたのこと覚えてて、でも今日元気ないなって…あ、いや、ストーカーとかじゃないんです、やましくないです、純粋に、というか、あのそのだから…」


男の人は顔を真っ赤にしながら、アタフタと言葉を紡いだ。
私はポカンとしてしまったけど、何だかまあ、可愛いなあと思ってしまったのだった。

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