第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
ジョースター御一行は今どこにいるか、題名ですでにネタばらしになっているが、
一応説明だけやらしてもらおう。
世界中の船やタンカーがいきかう海峡の国…自由貿易によって西洋と東洋がとけ込む多民族国家…シンガポール!
ジョジョたち一行は幽霊船から脱出した後、救助信号を感知して駆けつけてくれた本物の船によって救助された。
そして今現在は、港から離れた多くの人が行き交う道にいた。
この時ポルナレフは警察に、自分の荷物をゴミだと勘違いされ、罰金を払わされそうにもなっていた。
(ここがシンガポール…)
由来は辺りの風景をずっと眺めていた。
常夏の気候や照らす太陽。
社会の教科書でチラッと見たことがある写真の絵が、実物大で目の前に広がっている。
高校生である彼女からしたら、ちょっとお高めの修学旅行気分になってしまうのも無理はなかった。
慣れている日本や香港とは違う新鮮な空気に、少しだけ惹かれた。
でも彼女はそのムードを、表には絶対出さないよう気を付けてた。何故なら…
由来は、ジョースターさんたちを横目で見た。
私たちの目的はホリィさんの呪縛を解くこと
今までも命の危機に瀕した戦いを繰り広げてきたにも関わらず、危機が去った途端呑気にしてるなんて場をわきまえてない
自分はただ、ジョースターさんたちのサポート役としてこの旅に同行してるだけ
いかんいかん。決して、浮かれないようにしなくては…
「なんだ?あのガキ。まだくっついてくるぜ」
ポルナレフの視線の先には、アンが距離を置いて座っていた。
目的地のシンガポールには着いたから、共に同行する必要はなくなったはず。
「おい。おやじさんに会いに行くんじゃあないのか?」
「おれたちにくっついてないで、早く行けばぁ」
「どこ歩こうがあたいの勝手だろ。てめーらのさしずは受けねーよ」
出会った時と同じく生意気な口で反抗してくる。
女性の上品さとは程遠い態度で、ポルナレフは思った。
(このがきんちょ…もう少し由来みてーなおしとやかさを見習えばいいのにな~)
そして本人の由来は全く別のことを思った。
(良かった。もうすっかり元気になってる…)
アンの男っぷりな振る舞いを見て、逆に安心感があった。
やはり子供は元気に限る。