第14章 告白と小さなお別れ
「え……」
つまり、私のため?
「それに、嘘ついたつもりはねえよ……」
「?」
承太郎の様子が少しおかしいことにも気付く。
いつもより声が小さいというか、目を合わせないようにしているような。
うまく言い表せないが、とにかく何かが違う。
「承太郎?」
覗き込むように聞いてみる。
「……それに、ジジイから聞いたぜ。お前、またうちに来るって、おふくろと約束したらしいな?」
「あ……」
記憶を2週間遡らせる。
・・
『今度こそはちゃんとおもてなししたいわ。だから、うちにいつでも気軽に来てね!承太郎とも同い年だし、あの子ともっと仲良くしてほしいから』
『…はい。ぜひ』
ホリィに合わせて微笑んだ。
確かに日本を発つ前に、そんな会話をしたのをぼんやりと覚えている。
(あれも……何か、場の流れというか、社交辞令というか。危篤状態で無理をしていたホリィさんに、NOなんて言えなかったというか…)
私本人でさえ全く忘れていたのに、承太郎はしかも人伝で覚えていたの?
承太郎は首を傾げて私に問う。
「おめーさんの言う通り、約束に責任持つなら、俺がしたとしても問題ねえだろ?」
「……」
由来は自身の胸ぐらを掴んでいる手をさらに強めて、全く違う意味合いで自分の心臓の鼓動を感じる。
承太郎は直接的には言わないが、確かにそこには"思いやり"があった。
そして鼓動が早まるにつれて、徐々に理解していく。
これから死ぬ前提で、悔いが残らないよう済ませるのは、悲しいことだ。
そんな理由で、このような異国の地で奏でられるピアノの音色はきっと、全く違う意味合いを持ってしまう。
だったら、全てが終わってから、スタンド使いとしてではなく、ただ1人の友人として、魂を込めた一曲を心に刻みたい。
それも自分たちの故郷。日本でじっくりと。
自分だけじゃない。他の仲間達とも一緒に、彼女の演奏をまた聴きたい。
(承太郎はまさか、そんなことを……)
由来はそんな都合のいい解釈を勝手にして、承太郎の気持ちを感じ取ってしまう。
それに呼応して、心臓と感情が、理性を冷やかすように煽ってくる。