第14章 告白と小さなお別れ
ジョースター一行は、由来の防御の足止めと承太郎の巧みな攻めの戦略により、“運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)の追跡を食い止めた。
“最強の盾”と“最強の矛”が初めて手を取り合い、功を奏したというところである。
その結果、何とか敵のぼろ車で、ようやくパキスタンに入れた。
しかし、激しい戦闘の後で、消耗した体力や精神力のことを考えると、旅を続行するのは賢明ではないとジョセフは判断した。
「今夜はこの街で一泊してから、明日の朝、パキスタンに入ろう。もう目と鼻の先じゃから、今の内に休んでおこう」
パキスタン手前の穏やかな町で、人々は日本とは違うその地独自の伝統衣装を身にまとい、町中を歩いていた。
同じ宗教でも地域によって信仰が違い、その違いが町の空気に色濃くでているのかもしれない。
由来は伝統を重んじるその町の風景や人々を一望した。
(やはり、日本とは違うから、軽くカルチャーショックを受けるな。まあ、インドのようなゴタゴタよりこちらの静かな町の方がいいが…)
そして彼女は、ある違和感をずっと抱えていた。
何と言い表せばいいか、うまく表現できないが、町に入ったあたりから、胸のあたりに妙な圧迫感があった。
(この町の空気に風景、人、飲食店から流れてくる料理の匂い……何だろう…この感じ…)
胸のあたりに手を添えて、首を傾げた。
「!」
由来は慌てて振り返って後ろの皆を見たが、誰も彼女の様子に気付いていなかった。
ジョセフとポルナレフは、地図を広げてこれから泊まる宿をどこにするか話し合っている。
承太郎と花京院は、珍しく何やら男子高校生らしく雑談をしていて、アンは美術品のように承太郎に見とれている様子だ。
(ホッ。よかった。怪しいを行動すれば、探られるからな。仲間として心配することは、確かに大事なことだけど……私の場合、何か不審に抱いても、心の内に留めて、行動に出さないようにしなければ)