第13章 “運命の車輪”(ホウィール・オブ・フォーチュン)
(……由来。大丈夫か?)
ポルナレフは少し離れたところから彼女を眺めていた。
何か店のドリンクを注文しようとメニューを見ていたが、彼女の右目のことが頭をよぎった。
周りの一般人はちゃんと両目なのに、彼女だけ片目だ。
(俺のせいだよな。アイツは俺を止めようと慣れない説得を試みてくれて……)
『ポルナレフさん。アナタは優しい人です』
『アナタは、亡くした家族のために戦っている。その自分の問題に他人を巻き込みたくないから、あんな態度を取ったんじゃあないですか?』
『今ならまだ引き返せます。私はアナタの進む道を阻む気はありません。ただ、時期を待つべきです』
由来は本当に人と慣れ合わないタイプだ。自分から進んで話すことなんてしねェ。
なのに、俺のためにあそこまで言ってくれた。なのに俺はその親切を無視して行った。
(そして俺は、敵の策略に見事ハマっちまった。混乱にさせて、俺達をバラバラにする策略にな)
それで由来はあんな……
ポンッ
「!」
ポルナレフの肩に花京院の手が置かれた。
「花京院?」
「悔やめば、さらに彼女は気持ちが沈むと思いますよ。それなら、この先の旅で彼女をサポートすることを考える方がいいですよ」
花京院は花京院なりにポルナレフに励ましの言葉を贈った。
いつも辛辣な態度を取られているからこそ、彼の言葉に感涙にむせぶ。
「花京院。お前…本当はいい奴なんだな」
それぞれが休息を取っていたら、ある事態が起きた。
異常に先に気付いたのは、ジョセフだった。
店主に勧められサトウキビジュースを飲んでみようとしたら、グラスの反射で表面に背景が映った。
そこには何と、先ほどの赤い車がいるではないか!
「や、奴だ!あの車がいるぞ!」
皆で車の中を見てみたが、運転手らしき男はどこにもいない。
となると、この店にいる誰かが、ソイツだ。
「どうします?とぼけて名のり出てきそうにないですよ」
花京院がそう言うと、由来がホワイトシャドウを出した。
「スタンドを出して、それを目視した奴が黒です。それで見分ければ?」
「なるほど…!」
ストレングスでも使った同じ手を提案した。
そしてホワイトシャドウの右目には痛々しい傷が刻まれていた。