第12章 クーリング ダウン
〈DIOの館〉
そこにはDIOの側近として仕える魔女がいた。
エンヤ婆。J・ガイルの母親だ。
DIOにスタンドを教えながらも、僕としてこの館に居座っている。
が、何だか様子がおかしい。
いつものように、DIOのそばで薄笑いを浮かべて「ケケケケ」と不気味な声を出していない。
顔中汗がにじんで、杖を落とすほど動揺していた。
「今!わしの息子が死んだ!。今……わしの息子。J・ガイルに起こった不幸が親子のきずなの直感でわかる……承太郎やジョセフのジョースター家の血統が感じ合うのと同じように……!」
その様子を見ていたのは猫1匹。
ボコボコ
「!」
エンヤ婆の様子がさらに変になり、猫は反射的に距離を取った。
ウォルエエエエ~~!!
エンヤ婆の顔中には、ポルナレフがJ・ガイルに傷つけられたのと同じような傷口が浮かび上がっていた。血も出ている。
「かわいい息子よォ~。体中にこんな傷を負って死んでいったのだねえ~~っ」
杖を拾い、いきなり猛ダッシュしたかと思いきや、猫を杖で思いっきりはたき、怪我を負った猫はその場を去った。
「恐るべき対価は必ずや支払わせてやるッ!ブチ殺すッ!ヒヒヒヒヒケケケーッ!」
猫は柱の日陰で、つけられた傷あたりを自分でなめてた。
(ったく!あのクソばばあ。いくら俺が任務を失敗したからって、あんな当たるとは!)
そう。この猫は、さっきまで由来と戦っていた猫。ウォンテッドの使い手だった。
由来を生け捕りにし損ねたことをエンヤ婆に報告しようとしたら、急にあの老婆は嘆き始めた。
年相応のボケが始まったかと思いきや、自分の息子が殺されたことで半狂乱になったというところだ。
(まさかあそこまで追い詰めたところに、あの承太郎が来るとは……)
由来が誰かに助けを求めることは絶対しないと踏んでいたが…
死んで人形も同然の奴を奪うのはたやすいはずだった。なのに承太郎の奴が!
ホワイトシャドウでさえも、承太郎に服従しているのいうのか…?
「今回は失敗に終わってしまったらしいな」
「!!」
ゴゴゴゴゴゴ
ここは日陰。なら日光下に当たれないあの男が来てもおかしくはない。
「DIO…様……」
猫は傷口をなめるのを止めて、現れた帝王にすぐにひれ伏した。