第11章 そんな言葉じゃあない
「しかしそれは…」
「人の命がかかっているのです。どうかご理解を……」
由来は部屋でSW財団の医師と何か話をしていた。
ガラアッ!
「!」
話途中にジョセフたちが様子を見に来た。
「由来!大丈夫か?」
ジョセフたちから見たら、彼女の顔は左側しか見えなかったが、呼びかけたことで彼女は顔を左側から正面に向けた。
スッ
「お前……!!」
ジョセフは彼女の顔を見て、思わず絶句してしまった。
彼女は右目に眼帯をしていた。
それを意味することは……
医師は冷静に彼女のひどい傷のことを説明した。
「弾丸は彼女の右目の中に入っていました。銃ほどの威力で脳まで達さなかったのは奇跡と言えました」
そして由来を見て、無言の相づちを打った。
「銃弾を取り除けたのはよかったのですが、右目は…残念ながら……」
しかし彼女は、全く落ち込んでいる様子はなく、まるで現実を受け入れているように冷静だった。
承太郎はそんな彼女の様子を見ていた。
「処置はすべて終わりました。何かあったら呼んで下さい。では」
役目を終えた医師は部屋を出た。
「由来。右目を……」
「大丈夫です。命があるだけまだ」
命があるだけ。
一度死んでいたから、今こうして生きているのが奇跡みたいなもの。
それを救ってくれたのは紛れもない。
「承太郎が来てくれなかったら、私は死んでいました。それか、腕を失っていたかもしれません……」
こう振り返ってみると、彼にはすごいやっかいになってしまったな。
(今“承太郎”と呼んで……)
彼女が孫を名前で呼ぶのは……
「さっき医師の指導で試しに歩いてみましたが、特に異常はありません。それよりも、他の仲間は……」
「……アヴドゥルは___」
ジョセフは隣の部屋にいるアヴドゥルのことを話した。
「……そう…ですか」
由来は右目が使い物にならなくなったと聞かされたときよりも落ち込んだ。
「とにかくお前は生きていて何よりだ。恐らくポルナレフは花京院は敵と戦ってるやもしれん。これから探しに行く。お前は……」
「じじい」
ずっと無口だった承太郎が急に話をした。
「10分間だけでいい。席を外してくれ。コイツと話がしたい」
『!』