第8章 雪解け
……ッカ!ハーァ、ハーァ
由来は水面から出た瞬間のように、息をした。
これなら酸素が体全体、脳にまで回って彼女はもうすぐ目を覚ますはず。
承太郎は少し安堵した。いや、
・・・・・・・・
安堵してしまった。
「ミツケタゼ」
「!」
敵スタンドがすぐそこまで迫っていた。
「何ィ…!」
雪煙を煙幕代わりにしたから、ここにいるのは見られていないはずだ。
しかもスタープラチナのパワーでかなり滑って、かなり遠く距離を保ったはずだ!
どうやって突き止めた?
(まさか…)
承太郎は由来の太ももの傷を見た。
ポタ……ポタ……
由来の傷から血が出ていたのだ。
さっき駆けつけた時、冷たくなっていた影響で流血はなかった。なのになぜ。
(野郎ォ…!コイツの足の傷をさらに傷付けて、傷口を大きくすることで出血させたのか。そうして滴り落ちた血を、俺の足跡代わりに利用して追跡したなッ…!)
自分が怪我を負えば、痛みですぐに分かる。
しかし死んでいる由来の太ももの死角に傷を付けることで、全く気付かなかった。
(死んでいる奴の体に傷を…!)
敵の卑怯で劣悪な行動に怒りを覚えるが、その敵はもう射程距離内まで入ってきた。
「油断したな承太郎!!」
キィィンッ!!
敵は由来の能力の一部の氷結を繰り出して、承太郎を凍らせようとした。
地面を伝って氷が迫ってくる。
「クッ…!」
承太郎はスタープラチナを出した。
が、別のスタンドがそれを阻んだ。
“ホワイト…シャ…ドウ”
パキィンッ!!
『!』
しかし氷と氷がぶつかり合い、互いに砕け散った氷は無数の破片になり綺麗に舞った。
「これは…!」
承太郎の目の前に現れたのは、紛れもなく由来のスタンド、ホワイトシャドウだった。
(てことァ……)
承太郎は抱えている彼女の方に目を向けたら、彼女は僅かに意識を取り戻していた。
「お前…!」
「じょ……た…ろ…?」
こうしてホワイトシャドウの主導権は、敵の男から由来へと戻った。
(クソッ。目覚めちまったか。眠っていた白雪姫が、愛する者のキスに、なんてな)
敵スタンドに操られている警官の男は、微笑みをこぼした。