第7章 始まりの挨拶
刀剣男士side
『この本丸を正式に引き継がせていただきました。
よろしくお願いいたします。』
そう言って前をまっすぐみつめる少女に、
何故だか見覚えがある気がした。
ああ、そういえば…
主もそんな風だったと思い出して
なんだか泣きたくなるような、
切ない感情に胸が締め付けられた。
少女のまっすぐな視線が、
怖くて、居たたまれなくて…
僕はそっと視線を下にする。
「お話は以上でしょうか。」
沈黙を破るように
そう言い放ったのは一期一振だ。
『あ、えっと、怪我をされている方は教えてください。
小さな怪我でも手入れさせて欲しいです。
それで話は以上です…』
最初の勢いはどこへやら、
段々、弱気になっていく少女に
僕はふっと、口元を緩めた。
「それでは、失礼いたします。」
彼女の声には答えず、
一期一振は粟田口を率いて部屋を出ていく。
「兄様、小夜、僕達も自室に戻りましょう。」
「僕達も戻るとしようか。」
粟田口に釣られて広間を出ていく者もいれば、
少女の側へいく者もいた。
「之定はどうするんだ?」
「ああ、今日は失礼させてもらうよ。」
挨拶してもよかったのだが、
まだ少女の側へいく気にはなれなかった。
さて、今日の夕食はどうしようか。
そんなことを考えながら、
歌仙兼定は広間を出たのであった。