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🌈COLOR's🌈

第1章 寝癖



 =ノクターン=






ふわふわと、意識が上へと昇っていくような感覚に逆らうように、暫く目をつぶって居たけれど。
とうとうそれにも耐えかねて、ゆっくりと薄く目を開けた。



そして漸く、まだ辺りは真っ暗だったと気付く。
目が暗闇に慣れてきて、そういえば今夜は自室で寝てたんじゃなかったんだ、と…
斜め上に目線を上げれば、昨日私を時に優しく、時に意地悪く甘やかしてくれた彼の姿がある。



思い出して、一頻りひとりで照れた後。
こんな機会もないな、と夜目を凝らして、彼の顔を観察する。
いつも優しく見つめてくれる、目は緩く閉じられて。
整った鼻筋を下がり、ほんの少しだけ開いた口から寝息が漏れる。


規則正しい呼吸に安堵しながら、ぽやん、と弛んだ頬をつん、とつついてみた。
いつも自分がそうやって、子供扱いされているみたいに。



全く起きる気配が無いし、起こす気も無いのだけれど。
手持ち無沙汰なまま、ぷにぷにと柔らかい頬を堪能する。
うん、と小さく呻いた声と、ほんの少しだけ顰められた眉…


いつもあんなに格好いいのに、



「…ふふ、可愛い」



思わず小さく漏らした声、すると閉じられていた筈の目蓋がゆるゆると震え、持ち上がり。
優しい瞳が、こちらを覗く。



「…ひ、秀吉さん!ごめんなさいっ…起こしてしまうつもりはなくて、」


言葉の途中で、ぐい、と頭を抱えられ、その胸元に押し付けられる。
もごもごと空気を求め、良い体制を探す私の耳元に、優しく名前を呼ぶ声が降ってきた。
やっとの思いで、腕の中から頭だけ飛び出す。


もう一度見上げてみた顔はやはり、まるで幼子のように、深く眠りについていて。
眠りの淵で、他ならない私の名前を呼んでくれたのだと理解する――嬉しくて自然と、笑いがこみ上げて来るのを我慢しながら。
可愛らしい寝顔を見ている内に、私もまた、眠ってしまったのだった。
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