第5章 最低で最悪なアイツ
「そんなに落ち込まないでよ」
これが落ち込まずにいられるかってんだ
「……カズくんホントにおーちゃんの事、」
「…っ、」
…好きか嫌いかで言われたら、好きなんだと思う
でもそれは、智さんが俺の兄貴の様な存在だからで
血が繋がってなくても、家族だから
家族だと、思いたいから
「…アンタだって困るだろ、誤解されたままじゃ、」
そうだ
そうだよ
智さんは変なトコで真っ直ぐなんだ
誤解を解くって言ったって一筋縄じゃいかない気がする
「困らないよ」
「なんでっ…!」
「言ってたでしょ? 初めて会った日、カズくんの事可愛いって」
「…俺は女じゃねぇ」
「わかってるよ」
…そんな目で俺を見るなよ
「わかってる」
勘違いするだろ、
「男のカズくんを可愛いと思った
冗談でもからかってる訳でもないよ」
「…アンタ、男が好きなのか…?」
「違うよ」
確かめたくて、
「そうじゃない」
コノヒトの、本心に触れたくて
「カズくんだから、好きになったんだよ」
嘘だ、そんなの
こんな空っぽの俺を好きだなんて
そんな事ある訳無い ―――