• テキストサイズ

黒子のバスケ*Short Stories3

第31章 サクラサク*宮地*


「…合格祝いやるよ。」

「え!?そんな、いいですよ!来てくれただけでも嬉しいのに…。」

「黙ってもらっとけ。轢くぞ。…目、瞑ってろ。」

物騒な言葉を口にしているのに、先輩はふっと柔らかく笑っていた。

がさがさと何かを取り出す音が聞こえてきて、そっと左手を持ち上げられた。

「そのまま動かすなよ。」

すると手に何か冷たい感触が通り、手首に少し重みを感じた。

開けてもいい、と許可が出たので、目を開けて左手首に視線を落とすと、文字盤がピンクの銀色の腕時計が付けられていた。

「…!これ…。」

「大学生だと今よりも自分で時間管理しないといけないしな。…気に入らなきゃしまっとけ。」

「そんなことするわけないじゃないですか!…ありがとうございます。」

今日合格発表だったのに、まさか会いに来てくれて、贈り物までしてもらえるなんて思ってもみなかった。

左腕にきらりと光る時計を眺める度に、私は顔を緩ませてしまった。

「…これ用意してくれていたんですか?」

ちらりと先輩の顔を見やれば、少し照れくさそうに目を逸らして呟いた。

「…信じてるって言っただろ。」

どうして先輩は私がその時に欲しい言葉をくれるんだろう。

その感謝の気持ちのお返しをするにはどうしたらいいんだろう。

想いを巡らせるよりも先に体が勝手に動いていて、今度は自分から先輩に抱きついた。

「先輩、ありがとうございます。…大好きです。」

恥ずかしくて先輩の顔を見れなかったのが逆に良かったのか、ストレートに今の自分の気持ちを伝えられた。

「…、もう一回目瞑れ。」

反応が見たかったのにまた目を閉じると、頬に先輩の手の温もりを感じて、次に唇に柔らかな感触と温もりを感じた。

唇が離れて目を開くとまだ先輩の顔が間近にあって、私にしか聞こえないほどの大きさで声が聞こえた。

「…そんなの知ってる。…一年待ってたっつーの。」

私がそれを心待にしていたように、先輩も待ってくれていた。

桜咲く4月には、前よりももっと近くにお互いを感じられるはず。
/ 266ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp