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黒子のバスケ*Short Stories3

第22章 君以外からはいらない*赤司*


放課後の教室で作ってしまったトリュフを片手に、一つ溜め息をついた。

渡す勇気もなく、気持ちが通じる確率も低いのに用意してしまったのはバレンタインの魔力かもしれない。

1年生にしてバスケ部の主将を務め、頭脳明晰で端正な顔立ちをした同じクラスの彼は学校の中でも目立つ存在。

移動教室の時や昼休みに、毎時間の放課。

呼び出すとか、鞄に忍ばすとか、机の中に入れておくとか、方法はいくらでもあったはずなのに。

そんな勇気がない私をよそに、何度か女の子が彼にチョコを渡そうとしているシーンを目撃してしまった。

…受け取ったのかな。

皆可愛い子だったし、あの中に好きな子いたのかな。

どこか近寄りがたい存在だった彼と隣の席になって、少しずつお互いの話をするようになった。

その穏やかな空気が心地よくて、時折見せる柔らかな笑顔に心を奪われてしまった。

気付いた時には好きになっていて、ライバルが多い彼の特別になるのは宝くじが当たるようなものだとわかっていたのに。

想いを伝える前に他の女の子の隣に行ってしまうのは嫌で意を決したはずなのに、結局この時間まで手元にチョコは残ったままだった。

「…体育館覗いてみようかな。」

これが最後のチャンスだ。

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