第12章 ✽欠け落ちる
緊張しすぎてどうにかなりそうだ。
現実的ではないように見えるこの光景に何だか自分がいるのか分からなくなる。だって顔が整った人に押し倒されている私。こんなことになるなんて誰が想像したのだろうか。
「緊張、してますよね?」
「ま、まぁ……。」
何度かした事があるが、こんなに緊張した事は処女を捧げる以外になかった。寝心地の良いベットに身を任せて安室さんを見る。すると段々と顔が近づいてきては、始まるという合図のように思えた。恥ずかしくなり、そっと目を閉じる。
「んっ…。」
「もっと、口を、開けてください。」
いやらしく響く水音に頭が困惑しそうだ。口を開けると安室さんの舌が入ってきては今どうなっているのかは分からない。顔が見たい、彼はどんな顔で私にキスをしているのだろうか。
目を恐る恐る開けてみると安室さんと目が合い、少し頭を引いてしまった。がそれを彼は許すわけもない。
頭の後ろにホールドされた手で逃げられなくなり、腕にしがみつく。
気持ちいい。そう思えてくるほどに。
「これぐらいでへばってもらったら困りますよ。」
「ふぁ、はい……。」
キスが終わったと思えば、パジャマのボタンに手がかかりぼっとしていた頭が現実に戻った気がした。
その手を掴み、ボタンを外す動作をやめさせると彼は不機嫌そうに口を尖らせる。
「自分で脱ぎたいのですか?」
「な、な、ち、違くて!……ほ、包帯は自分で取ろうと……。」
こんなに早くことを始めるなんて思ってもいなかったので包帯を外し出なかったのだ。安室さんは手を離すとすぐにパジャマを脱ぎ、キャミソール1枚になる。別にそれは恥ずかしくはないが包帯を取った後に肌を見せるのが恥ずかしい。もしかしたら、失望させてしまうかもしれない。
震える手で包帯を取っていき、お風呂や長袖以外で外したことがなく安室さんにもきちんと見せたことが無い腕が見えてきた。
「じ、時間をとらせてしまい、申し訳ない、です。」
緊張しすぎてカタコトみたいになってしまったが、包帯を近くになったゴミ箱に捨てては安室さんに両腕を差し出した。