第10章 ある男の回想 降谷side
檜原雪花(24)は楽な対象だ。
彼女は他人よりも依存をしやすい。
安室透としてポアロで働いていたら、対象がいい感じに来ては良いふうに転がった。
彼女の彼氏は、麻薬の運び屋で警戒をしていた人物だ。まさかこの彼女と会えるなんて思ってもなかったので"探偵"として近づいて情報を得ていた。
そんな檜原雪花に近づいていくと彼女の自身のことも分かっていた。
まず1つ、凄くネガティブなところだ。自分を下の人間だと思いこんでいるのか自分をせめまくる。
その次に、お人好し過ぎる所だ。
『仲直り、したんです。元彼の浮気相手と。』
そう言われた時は、正直な所バカだと思った。普通だったら憎むはずだし、ショッピングなんていかない。と思った。しかし、それも愛おしく感じるようになってきた。
この頃、自分の様子がおかしい。
彼女の優しさや、自分に自信がない所、小さくて目がくりくりとしているところが全部"可愛い"と思うようになって彼女なしではよく眠れなくなってしまった。
「この頃、降谷さん。顔色とか良いですね。」
風見にそう言われた。鏡で自分の顔を見たが顔色が良い。と思った。それほど、彼女の力が強いのだろう。
早く仕事を終わらせて家に帰れば、穏やかな顔で寝ている彼女。それを見るだけで癒やされている。
「本当に、こいつは無防備なんだよな。」
柔らかい頬を引っ張ると苦い顔をされた。
俺に慣れてくれているのか、にこにこしながら近づいてきたり一緒に寝たりして、普通の恋人同士みたいだ。
目がくりっくりで髪の毛はふわふわしていていつもご機嫌そうな顔をしている……何だろうかうさぎみたいだ。
そんなうさぎの隣に今日も俺は眠る。