第7章 偽りの姿
静かに扉を開けると玄関には靴が置いていなかった。
「誰もいない。」
言葉を出しても、虚しくも自分の声だけが響く。よし、これは好都合だ。
部屋に入り、すぐに自分の寝室だった部屋に入って最初に来たように鞄に物を詰めていく。そこには、新しく買った服も見えた。
そうだ、私着替えてないんだった。新しい気持ちでここから出て行こう。そう思っては、すぐに素早く着替えた。
白のワンピースだ。七部袖だけども、そこにカーディガンを羽織れば包帯は見えなくなる。
荷物をまとめて、すぐにリビングまで行った。そこにも誰もいない。テーブルの上に手紙を置くと涙が溢れてきた。
なんだかんだと凄くここにはお世話になったのに恩返し出来てないなんて思ってもいなかったよ。
袖で強引に拭き、玄関を目指す。それでも涙は溢れてくるばかりだった。
玄関の前に着いたけれども、何だかもう一度見たくて振り返る。
「本当に、ありがとうございました。」
「それって、部屋に言うんじゃなくて本人に言うのではないですか。雪花さん。」
へ、へ!?後ろを振り返ると走って来たのだろうか。
息を切らしている降谷さん……安室さんが私を見ていながら微笑んでいた。
何だかその姿に涙がまたポツリと溢れてきて今度はなぜか拭けない。なんでだろうか、まだ彼が帰ってくる時間帯ではないのに。
早く家にいる安室さんに驚きを隠せなかったが、すぐに状況を理解しては頭を下げた。