第3章 早い仕事に、バカな男
「なんで……?」
「本当にバカな男です。檜原さんの忘れ物を届けに行こうとしたら家から出ていくのを見て、それに僕を見たのか殴りかかってきました。」
「!、大丈夫、なんですか?」
嘘……、探偵にも手を出そうとしたの?
痛みに耐えながらも手を伸ばし、頬を触れて怪我がないか確認するとなさそうで良かった。
安室さんは私の手を掴み、床におろす。その動作はすごく優しくて今からでも涙が出てきそうになる。
「一応、体術には自信がありましてねぇ。取り押さえました。その後、警察も呼んだのでもうすぐ来ると思いますよ。」
「お、お仕事が早いです……。」
それは良かった。背中とか支えてくれていたのだけども、痛む状態を起こし安室さんと顔を合わせた。
探偵さんは本当にすごい、まさかの事態を臨機応変に対応しては私の安否確認までするなんて。探偵というより、警察官みたいだ。
「なんだか、安室さんは警察の方みたいです。」
「……なんでそう思うのですか。」
「探偵は推理だけだと思っていましたけれど、まさかのことに臨機応変に対応していて……でも、それは安室さんだから対応出来るんですね。」
足を折り畳み、正座になっては頭を下げた。
涙が溢れそうになったけれど必死に耐える。まだこんなところで泣いてはいけないんだ。泣けばいい。なんて思われても嫌だし。
「本当にありがとうございました。」
私の震えた声は響き、そのまま頭を上げると抱きしめられた。