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【ヒロアカ】自己犠牲ヒーロー

第9章 爪の垢を煎じて飲みたい


「ねぇ、なんであんなことしたの」
『……何の事ですか?』
「すっとぼけても僕にはお見通しだよ』
『ではどうして聞くのですか?』
「僕はおしゃべりが大好きだから」
『そうでしたね…………助けを求める人がいたから、ですかね』
「どうでもいいんだけど」
『知ってます。貴方はまだ、私の爪の垢を煎じて飲みたいですか?』
「まだってなにそれ。ずっとだよ」
『あげないですよ。垢も身体も』
「奪ってみせるよ。何もかも」
『そういえば、彼女のことはもう諦めたんですか?』
「諦めてないよ。諦めてたら君と心中するさ」
『彼女も諦めてなかったですね』
「みたいだね。これが吉と出るか凶と出るか」
『凶に私の寿命』
「ちょっと。せめて吉に賭けてよ」
『私の命はそれくらい安いんです』
「僕にとっちゃとんでもない」
『この身体ももうすぐ尽きます。他を探さないんですか』
「探さないよ。君みたいなバカ正直には一生会えない気がするから。嘘が嫌いな僕には愚問でしょ」
『そうですね。…………春香が来ましたね』
「え、分かるの!?」
『もちろんです。今エレベーター登ってます』
「あーあ、なんで毎日来んのあの人」
『私の事、大好きですから』
「自惚れんな」
『自惚れてなんかいません。事実です』
「そーでした。君はそーゆー人でした」

トントントンッ

「げんきぃ?」
『元気なわけないでしょう』
「あははっ!君はやっぱ違うなぁ」
『なにが違うんですか』
「ふふふ」
『いい事あったんですか』
「聞いて聞いて。私ねー好きな人できたんだぁ」
『今度はどんな子ですか』
「君にそっくりでね。今を生きる大和撫子って感じ」
『やめてください。私のどこが大和撫子ですか』
「君にも会わせたいけど、ちょっと難しいかな」
『そうですね』
「ねぇ、寂しいよ。早く、目を覚まして。どうして私が君を延命させてるか、分かる?……君が起きたら、いや、君の名前を先に思い出さなきゃ。ごめんねごめんね。君がいるのはわかってるんだ。誰も君を思い出さないから私が頑張らないと……」


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