第7章 灯台下暗し
指先が、関節が痛い。
そんな弱音、言ってたら、死ぬ。
『降参、しません。……私は、私の依頼主の正義を貫くまで、立ちます』
シェイドは両手を開いて閉じてまた開いて、顔のバンダナを取る。
『世の為、人の為に、私は、この命捨てる覚悟でヒーローやってるんです』
シェイドはチャージズマを睨め付けるが、その目には何も映っていない。
『掲げる正義が違えば、同じヒーローでも敵同士』
左腰のホルスターから銃を抜き、ハンマーを上げ、チャージズマに向ける。
『あなた方の正義は子供を守る事。私の正義は子供を帰す事』
その言葉にデクは跳ね起き、肩からの出血量が増える。
『目を覚ましてください!』
シェイドの悲鳴にも聞こえる叫び声と共に放たれた弾丸は、
カキンッ
硬い何かに弾かれた。
思わず目を瞑って両腕で顔を覆っていたチャージズマが薄眼を開けて目にしたのは、
「切島!」
外の生垣に転がされていたはずの、全身硬化した烈怒頼雄斗だった。
「お前!どこ行ってたんだよ!無線も繋がんねえし!」
チャージズマは烈怒頼雄斗に噛みつかんばかりに吠える。
烈怒頼雄斗はおもむろにチャージズマを振り返ると、
「目ぇ覚ませ」
「ぐげっ」
硬化した右手でチャージズマの頰を平手打ち。
チャージズマは頬から血を流し、茫然と右を向いて壁を見ている。
烈怒頼雄斗は踵を返してデクの元へ行くと、腰のポーチから出した包帯やガーゼで左肩に応急処置を施す。
「……ありがとう」
「良いってことよ。お前も目え覚めたか」
「うん。我ながら情けない」
「俺も人の事言えねえが、経験不足ってやつだな」
「もう街の人に顔向けできないや」
「そんなん俺も同じだっての。みんな仲良く批判されようぜ」
烈怒頼雄斗の情けない言葉と頼もしい笑顔が、今のデクには嬉しく思えた。