第4章 おくびにも出さない
隣町のホームセンターで目的の物を買い終えたシェイドは、偶然、1つの大きな門の前を通りかかった。
数百年前の町の庄屋の屋敷のような、立派な門構えである。
シェイドは思わず立ち止まり、門を見上げていた。
善悪を問わず、よそ者を寄せ付けない迫力がある。
カラッとした秋晴れの昼下がり。生暖かいそよ風に吹かれ、落ち葉が舞う。
シェイドが何か違和感を感じて、その正体を見つけようと考え始めた時、門が開いた。
出てきたのは、私服姿のデクだった。
シェイドとデクはお互いを認識すると、お互い黙り込んだ。
静かに時間と風が過ぎる。
先に口を開いたのはシェイドだった。
『先日はありがとうございました』
「いえいえお気になさらず」
突然頭を下げられてデクは戸惑う。
シェイドは初めて会った時のことを言っているのだろう。
シェイドが顔を上げると、デクの着ているTシャツに目が行った。そして、表情を一切変えずに驚いた。
〈ネルシャツ〉と黒くしょぼい字で書かれた白いTシャツを見て、シェイドはかける言葉を失った。
その様子にデクは首を傾げた。
シェイドが気を取り直すと、デクに質問した。
『仕事の方は順調ですか?』
デクは軽く頷いた。
「簡単な護衛任務なんだ。期間は長いけど、5人でやってるから見る範囲も狭くて効率化できてる」
『そうですか』
会話が途切れると、シェイドは一礼して
『では、私はこれで』
と言って歩き出した。
「うん、気をつけてね」
デクはシェイドを見送ると、シェイドと逆方向に歩き出した。
シェイドは歩きながら考えていた。
初めて会った時、デクは「救援要請があったから、この町に来た」と。
この周辺は、救援要請を出すような事件も災害も起きてない。
少し考えれば分かることだ。
初対面で嘘をつき、2度目で真実と思しき発言をした。
シェイドは、自分が深く考えすぎてしまっているだけだと思いたかった。
デクは歩きながら考えていた。
先日、学生時代の友人から突然来た依頼。
シェイドの個性探り。
彼女が個性を使っている姿は見たことが無いが、友人の感じた違和感の正体、それを突き止めるのがデクの第2の仕事だ。
どうやって聞き出そうか?