第3章 根掘り葉掘り
シェイドは、爆豪と烈怒頼雄斗とチャージズマをビジネスホテルまで案内した後もパトロールをして事務所に戻った。
時刻は午前3時。日の出前だ。
ヒーロースーツを脱いで、下着と共に洗濯機で洗う。帽子はコートハンガーにかけて、ブーツはその下に置く。
洗濯機が回っている間に沸かしておいた風呂に入る。
パジャマに着替えて、テーブルに並べられたナイフをひとつひとつ丁寧に拭いていく。
ナイフを箱に入れて棚に入れると、細身の拳銃の整備を始める。
整備を終え、棚に拳銃も仕舞う頃には洗濯機が止まる。
洗濯物を入れたカゴを持って、非常階段を登り、オフィスビルの屋上に出る。
あらかじめ社長の方に願い出ている為、屋上に洗濯物を干すことは許されている。
シェイドは洗濯物を干しながら昨日の夕方から今までの事を考えていた。
町を散策するはずが“次世代のオールマイト”とメディアに騒がれているヒーロー__デクと出会い、彼の学友であっただろう烈怒頼雄斗、チャージズマとも出会う。あの2人の側に居た爆豪という青年もそうだろう。
彼は中学時代からちょっとした有名人のようだが、シェイドは詳しくは知らない。行方不明になったりしていた気もする。
『波乱万丈な人生も飽きないでしょうが、考え方1つで平凡の方が良いことが多いように感じますね』
シェイドは他人事のように呟いた。実際、他人事だが。
人に関心を持たないことで、シェイドは安易に敵に銃を向けられる。故に、躊躇なく撃てる。
ナイフもそうだ。躊躇なく相手に血を流させる。
不幸中の幸い、彼女は人を殺そうとは考えない。
ヒーローとしての役割を担っている、と言う自覚がある証拠でもある。
シェイドは全ての洗濯物を干し終え、東の空に顔を向けた。
日の出だ。
新しい1日を照らす光がシェイドを照らす。
シェイドは眩しくて目を逸らす。
__君が見ていて良いものではない__
__君は僕の__
『私は、貴方の陰……』
シェイドは首を振って余計な思考を排除する。
『さて、寝ましょうか』
衣服のはためくオフィスビルの屋上から人影が消えた。