第2章 どんぐりの背比べ
午後10時頃。
シェイドは、上下寒冷迷彩のよくある戦闘服に着替えた。すなわち、カーゴパンツに似たズボンと長袖のコンバットシャツ。腿の左右に、予備の弾倉を入れるポーチを装備している。
首には同じ寒冷迷彩柄のバンダナ。
頭には、結い上げた髪を中に入れた飛行帽によく似たツバのついた帽子を被り、ゴーグルで止める。
腰には細身の拳銃を入れたホルスターを提げている。
シェイドは、ヒーロースーツを入れていた鞄から鞘に入ったコンバットナイフを取り出す。鞘も寒冷迷彩柄にしてある。
鞘からナイフを出して確認する。刃は光を反射しないように黒くなっている。
全長30cm、刃渡りだけでも20cmはありそうなナイフを鞘に戻し、フラップで止める。腰の後ろに水平に装備した。
編み上げブーツでその場で何度か跳ねて、感覚を確かめる。
シェイドはバンダナで顔を隠すと、事務所の路地裏につながる扉を開けた。
ヒーローは大体昼間にパトロールをするが、シェイドは夜にパトロールをする。
ただ単に目立ちたく無い、と言うのもあるが、昼間に起こる事件数より、夜に起こる事件数の方が明らかに多いからである。
早期発見。早期処理。
シェイドのモットーの1つである。
と言っても、シェイドにとってこの町は、まだ分からない事だらけで、もしかしたら夜の事件は結構少ないかもしれない。
それならばそうでも構わない。
事件は少なければ少ない方が良い。
シェイドがぼんやりと周りを伺いながら町を歩いていると、今日の夕方頃にデクと出会った川に来ていた。
下水のようにヘドロが底に溜まっていた川。
夕方の一件で、見違えるほどにヘドロが減った。
なぜ、あの敵はここに居たのか。
なぜ、あの時あのタイミングで姿を現したのか。
気になる事は多いが、捕まった敵の事情を聞き出すのは警察の仕事であって、ヒーローの仕事ではない。
『(情報が回って来るのならばそれで良い。回って来なくても、それはそれで構わない)』
誰かの為になっているのならば、なんだって良い。