第8章 ハマナス
真っ暗な海岸。
人気のない倉庫に車をとめハンドルを拳で叩いた。
「くそっ」
降谷の悲痛な声が闇に消える。
「大切な者を…また俺は失うのか?
…………なぁ、みんな」
窓からはいる海からの冷たい風が降谷を撫でた。
彼女がどうして組織に入ったのかはわからない。
聞かないの?の言葉と共に流れた先程の涙の意味を知りたい。
スマホにはなんの連絡もないまま時間だけが流れた。
「…………」
あの最後に言った言葉は真実で。
愛しているからこそ戸惑いが降谷を襲う。
愛がこんなにも人を脆くするものなのか…
ふと眩い朝日が降谷零を照らした。
「…………景光?」
朝日を見つめて車の外にでた。
みんなが笑っているような気がして不意に笑みがこぼれる。
「まだ……
まだ1人ではない。か」
なにかを決心したような表情で車に戻り去っていった。