第12章 今夜は朝まで離さない/中編
俺の隠れ家は安土の城下町から程近い山中にある。
利用者が居なくて放置されてた山小屋を偶然見つけ、手間ひまかけて自分でリフォームした。
信玄様ほど大工の腕があるわけじゃないから見栄えは良くないけど、プライベートな時間を過ごすには充分な環境だ。
12畳ある広めのワンルーム。
裏にはトイレと風呂も増設し、井戸まで掘った。
簡単な料理ができるミニキッチンもある。
今日ここで莉菜さんと俺は結ばれる…
……はず、だったけど。
本当なら今ごろ睦み合ってたであろう布団の上で、莉菜さんは こんこんと眠り続けていた。
「すー… すー…」
布団の側に座って その寝顔を食い入るように見つめる。
男に確認したところ、使用した薬の成分に毒性のものは一切含まれていないとの事だった。
だから自然に目覚めるのを待ってればいい。
…だけど、何でだろうな。
静かな部屋の中でいるせいなのか。
莉菜さんがこのまま起きないんじゃないか、なんて…
そんな不安に駆られてしまう。
今日、自分の詰めの甘さから莉菜さんを危険に晒した。
俺がもっと危険予測出来ていればあんな目に合わせることもなかったんだ。
守ると誓ったばかりなのに、
もう少しで君を………
君の心と、身体を……………