第10章 熱帯夜に見た夢/R18
「わぁ!莉菜様、よくお似合いですよ!」
「ほんと!?」
部屋の中に、女子特有の明るい声が響く。
私はお晴ちゃんに仕立ててもらった浴衣を纏い、鏡の前に立っていた。
読み書きの勉強を教えてもらった日から約半月が経った、8月中旬。
佐助くんから改めてデートのお誘いがあった。
『安土から少し離れた村でお祭りがあるから行かない?』と言われ…
前回、変な別れ方をしてしまいモヤモヤしていた私は二つ返事で頷いたのだった。
「お晴ちゃん… 忙しいのにほんとにありがとう」
「いえいえ、浴衣の縫製は そう難しいものではありませんし!それに莉菜様のお召し物を縫わせて頂けるなんて、光栄なことです」
私が祭りに行くと知ったお晴ちゃんは仕事が休みの日に丸1日かけ浴衣を完成させてくれた。
さらに今日、誰にも見つからずに城を出るための手助けまでしてくれると言う。
普段 着ることのない浴衣姿で出かけるのを見られて 怪しまれるといけないからって……
「お晴ちゃんには感謝してもしきれないよ」
「ふふ、佐助様の反応がどうだったか、またお聞かせ下さいね!では そろそろ行きましょうか」
「うん、お願いします!」
私達はそっと部屋を出て、慎重に城の裏口へと回った。