第1章 みるくーおかわりー
「……」
彼女の横顔を薄暗い月灯りが優しく写し出す。その、寝室の唯一の明かりを遮るように、雄一はに覆い被さった。ベッドが少し軋む。から、お風呂上がりの、あの独特な、それでいて魅力的な香りが立ち上がる。
どれくらいぶりにを見つめたのだろう。
すっと伸びた睫毛。ぷっくりとした唇。小さな鼻も可愛い。それを、確認するように、そっと触れていく。
こんなにも愛おしいのに、余裕の無さに溺れそうだった自分は、どれくらい寂しい思いをさせてきただろう。笑ったり怒ったり、キスをしたり、愛し合ったり。そんな、些細なことも満足にできないでいた。
「………雄一くん?」
頬を少し冷たい手が包み込んだ。
「…なに、かんがえてるの?」
吐息やベッドの軋み、触れられる感触に目が覚めたのか、寝ぼけ眼のと目があった。
微睡みの中、優しく微笑んでるような表情。添えられた冷たい手の平。オーバーサイズのTシャツから覗く鎖骨。肌に触れるシーツの感覚。持て余している燻りには、あまりにも扇情的な光景に写った。
「…のこと。考えてた。」
「…え?」
驚きで少し見開いたの大きな瞳を数秒見つめた後、待ちきれない感情に負けて、その小さな唇に熱のこもったキスを落とした。触れた瞬間、我を忘れたようにを抱き締めた。
突然のことにが抵抗したのは一瞬で、すぐに全身の力が抜け、次いで、背中にきゅっと抱き締められる感覚を遠くで感じた。薄目で見た、なんとも言えない表情は、キスの快感に身を委ねているように見えた。
「…んっ、はっぁ…」
少しだけ開いている唇の隙間から、舌を差し込んで、優しくの舌を絡める。すると、それに、答えるようにも舌を絡めてきた。
その、遠慮がちにでも確実なからの口づけが自身を高ぶらせる。雄一は、右手を優しくの頬に添え、鎖骨や首筋を滑らかに行き来させる。ずっとこのままでいたいと思わせるほど、全身が震えるような感覚に包まれた。
「…雄一くん、もっ…とっ」
の哀願の声が漏れる。それが、引き金となって、今宵遅くまで二人の足はもつれた。
おわり