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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第2章 黒の時代


執務室に戻ると
余りにも酷い顔の私をみて中也は慌てて駆け寄ってきた。

「おい葉月!何があった!?」

足取りがおぼつかない私を中也は支えながらソファに座らせた。
私の手には携帯が握られていた。
画面には葉琉からのメール画面

【行って来る!】

とだけ表示されていた。

私は俯き涙を流した。

「葉琉……ごめんなさい
太宰さん………ごめんなさい
織田作さん…ごめんなさい」

何度も繰り返す
葉琉にも、太宰さんにも、織田作さんにも届かない声。
それでも呟き続けていた。
いきなり、私の身体は中也に抱きしめられた。

「中……也…?」

「何があったか知らねェけど
何かあったら話せって言ったろ?
一人で悩むなよ」

そう言ってさらにギュッと抱きしめてくれた。
とても心地よい暖かさだった。
だけど、私にはそんな暖かさはない。
あれば三人を見捨てたりする筈がない。
私は、心も氷の女になってしまった。

そっと中也から離れた。

「中也。私ね
何もかも気が付いてたの」

そう言って中也に台本の中身を伝えた。

「私、最低な人間でしょ?
もう立派なマフィアだよね。
首領にも素晴らしいなんて言われちゃった」

ハハハと笑った私を
中也は真剣な顔で見つめていた。

「こんな事で、慰めになるかわかんねェけど
例え手前がそれを報せてたとしても
事は起こったと思うぜ?
あの首領のことだ。
他にも手はあったと思う」

中也は私の頭を撫でた。

「少なくとも俺は葉月を
冷たい女だとも、酷い女だとも
思ってないぜ?」

ニッと笑いながら向けられた笑顔は
いまの私には眩しくて
また涙が溢れた。

せめて、織田作さんの元へむかった二人が
最悪の台本の最後だけでも
変えてくれることを祈ることしか出来なかった。
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