第1章 月に吠える
ヨコハマのとある倉庫街。昼間は業者やらで賑わいのある場所だが
夜が深くなると人気は無くなる。
ましてや、子どもなどいるわけがないのだ。ただの子どもなら……
「おい、太宰!本当にこっちであってンのかよ!」
この場所に似つかわしくない、まだあどけなさが残る少年が一人。インカムに話しかける。赤みがかった癖毛の少年だ。頭には黒帽子が乗っている。
探し物が見つからないのかブツブツと文句を言いながら倉庫街を歩いている。
中原中也ー16歳
異能力ー汚れつちまつた悲しみに
『私の計画に間違いはないよ。中也。……次の倉庫だ。』
少し離れた高台から指示をだすもう一人の少年。首と両腕から包帯をチラつかせていた。
太宰治ー16歳
異能力ー人間失格
目的の倉庫の前で足を止め、ニッと笑う中也。先程までは感じなかった殺気が溢れ出している。
「殲滅…でいンだよなァ?」
いますぐに暴れ出したくて堪らない様子だ。
『首領からは、そう指示がでている』
確認を終え、中也は異能力で倉庫の扉を吹き飛ばした。