第9章 双つの黒と蕾の運命
葉月は眠っている中也の頭を膝に乗せ、空を見上げていた。そういえば、昨日もこんな空だったけ。そんな事を思い出す。
ーー昨日の夜
「此処で話すと葉琉が起きてしまうから、少し付き合ってくれ給え」
太宰にそう言われて葉琉を寝台へ移した後、二人で屋上へ上がった。
「 では、本題をどうぞ」
「いつになく性急ではないかい?」
「時間があればもう一眠りしたいので」
「敵拠点で随分と余裕だね」
葉月はジロリと太宰を睨むと太宰は「判った判った」と両手を挙げた。
「森さんと密会を行いたい」
「それは、太宰さんが、ですか?」
「否、ウチの社長だ」
「……成る程」
葉月が暫く考え混んでいるのを、太宰は黙って待っていた。
「たぶん、首領は赴くでしょう。これは好機ですからね」
「私もそう思うよ」
「判りました。その伝言人、お受け致します。但し、姐さんにはちゃあんと太宰さんから伝えて下さいね」
太宰はふふっと笑って「そうさせて貰うよ」と言った。そして、「ところで」と話を切り替える。
「久々の【漂泊者】は如何だったんだい?」
「大分持っていかれました。でも、まだ能力は残っています。それより、太宰さんは何時から気付いていたんですか?『氷島』が私の能力ではないこと」
太宰はうーんと悩む姿勢を見せると「君達の眠っている時間に差がで始めた時からかな」と答えた。
「それに、その頃からだろ?君が拳銃の扱いをより練習し始めたのは」
「厭ですねぇ。少しの情報でそこまで見てるなんて」
太宰は「いゃあ、それ程でも」と照れて見せる。葉月は「褒めてません」とピシャリと言った。
「だが、私が出来るのは推察だ。実際は如何なのか、それは当事者にしか判らない」
「太宰さんこそ如何したんですか?四年前は気付いていても聞いてこなかったではないですか。葉琉は関係ないと思っていました?」
太宰の視線が鋭くなるのに気付き、葉月は「図星のようですね」と笑った。