第6章 時として望まぬとて
月明かりのみでよく見えないが、照れているのだろうか。目線を逸らしていた。だが、直ぐに向き直り、真っ直ぐ私の目を見ている。
「先ず、俺から言わせてくれ。好きだ、葉月」
「…うん!私も、中也が好き」
中也は安心したように微笑んだ。それを見て、私も笑った。
「俺はもう、一人で悩むなんて許さねぇからな」
「うん!有難う」
不意に私の頰に添えられた手。真っ直ぐな視線。しかし、余りの恥ずかしさに顔を逸らしてしまう。
「待って…私、泣いた後だから顔ぐしゃぐしゃだし…こういうの慣れてなくて」
中也の表情が少し意地悪なものに変わる。
「そりゃァ拝んでおきてぇな」
私の顎に手を当て、くいっと引っ張られた。
「…///」
「ンだよ。可愛いじゃねぇか」
そのまま、中也の唇が触れた。触れるだけの優しい接吻。直ぐに顔が離れた。
「…誘ってるのか?」
「え?」
火照った顔、泣いた後の潤んだ瞳、少し濡れた唇。何れも中也を喜ばすには充分過ぎるものだった。
「いや、違うって!」
慌てて中也から離れて両手を振る。中也はそれを見て笑い出した。
「本当に面白ェな。動揺し過ぎだろ。そんなんじゃこの先、身が持たねぇぞ」
「こ、この先って……///」
更に自分の顔が熱くなっていくのが判る。
「ほら、何時迄も車待たせんの悪ぃから帰ンぞ」
中也が手を差し出す。
「…うん!」
中也の手を取り、二人で歩き出した。