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暗闇の蕾【文豪ストレイドッグス】

第4章 西方組織抗争


交差点に行くと路地に入る男の姿が見えた。私は誘われるように後について行った。

少し奥に入ったところで男は待っていた。

「ようこそ、お嬢さん」

男はにっこりと笑っている。だが、相変わらず隙のない様子だ。

「何の用ですか?私を呼んだんですよね?」

「まぁまぁ、そう焦らずに。お茶でも如何だい?近くにいい喫茶店があってねぇーー」

「いい加減にした下さい!」

くくくっと男は笑っている。

「そう急ぐ事もないだろう。長い時間生きていると退屈でね。少しおじさんに付き合って欲しかったのだよ」

「目的をお話しください」

男は少し考えてから切り出した。

「君は、否、君達は何処まで自分の能力を使えるのかね?」

「…は?」

「だから、君と片割れの事だよ」

何故この男が私と葉琉の能力を…?

「私はね、君達をずーっと探していたんだよ。君達なら私を覚まさせてくれると思ったからね」

「…如何いうこと?」

「私の事については知っているだろ?優秀なポートマフィアの事だ、調べているはずさ。
調べた通りだよ。私はもう数千年生きている。嗚呼、でも途中で眠りについたからね。起きたのは数百前だよ」

驚いて言葉にならなかった。半信半疑だった事が本人の口から真実だと聞かされ、嘘を付いていない、付いてもメリットはない事が判っている。

「君達の異能力の本当の力は氷を作り出すことではない事は判っているね?」

そう、私達の本当の力は世界を凍りつかせる。即ち、時間を止めることだ。

「君達の異能力は自分の時間を、世界を作る能力だ。だが、更に研ぎ澄ますと他人の時間も凍てつかせることができるだろう。…例外はいるがね」

例外、太宰さんの事だろう。彼の異能力人間失格は、私達の能力でも例外なく無効化する。

「私の能力はね、夢なのだよ」

「夢?」

「そう、夢だ。私自身も今じゃ夢で出来ている。故に死なない。異能力無効化が本体に掛かれば或いは覚めると思うが、生憎本体はもう無くてね。この時代までのうのうと生きて来たのだよ」

「それで、私達なら目を覚ます事ができるとは?」

「嗚呼、それはね」と男は思い出したように話始めた。

「君達に私の夢を終わらせて欲しいのだよ」

男は満面の笑みで私にそう言った。
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