第12章 お庭の小屋で
シンク下の隙間から誰かが私に話しかけてくる。
(誰…)
まだあまりハッキリしない意識で、
そちらの方に顔を向けて目を開けると…
シンク下に手足が生えた"菜箸"が一本横たわっているのが見えた。
(菜箸が…グッタリしてる……
って菜箸…菜箸(´⊙ω⊙`)!!?)
菜箸
「魅菜さん…しっかり!」
そして何故か私を励ましてくる。
(あなたも…しっかり……)
魅菜
「…あ……ありがとう…菜箸さん……」
菜箸
「私は大丈夫です…
ここが狭くて起き上がれずにいるだけですから。」
(そっか…狭い場所に転がってるもんね…
菜箸って長いから立ち上がるなら20センチくらいはないとね…
そー言えば菜箸って転がりやすいから
見つけるの大変ってお母さんも言ってたな…
黒さん菜箸さんを落としたままずっと探してなかったんだな。可哀想に…)
魅菜
「…私が死ななかったら……拾ってホコリ…洗い流してあげるね。」
菜箸
「それは有り難いです…
それでは再び意識が飛ばないように何か話しをしましょう。」
魅菜
「……うん…」
菜箸
「私は九十九神なのですが…」
魅菜
「九十九神…?」
菜箸
「そうです物は100年使われると九十九神になるのです。」
魅菜
「…凄い…」
神と聞いて私はこのまま死ねない!
仰向けになりながら手を合わせて菜箸さんにお願いする。
魅菜
「…お金持ちに…なりたいです!!」
菜箸
「いや…あの魅菜さん。
九十九神といっても、そうなんて言いますか……
本物の神のように願いは叶えられませんし…
今お願いするなら死にませんようにが適切なような…」
魅菜
「……え……」
私は一気に希望を失い…また意識が遠ざかっていく