第6章 いつぞやの会話-信頼編-
「今日はどんな感じになりそうだ」
「遅くとも午後いっぱいで終わる。と思いたい」
「…神のみぞ知る、か」
「そうかもしれないな。……ん?」
「ナナバ…(と、見ない顔だ)
「随分と楽しそうだな。ミケ、彼は知り合いか?」
「いや…、俺は知らん」
「そうか…。いやしかし、ああやって自発的に交流を持つのは素晴らしい」
「……」
(本当に楽しそうだ)
「エルヴィン、そろそろ時間だ」
「あぁ…すまない。行こうか」
…
…
…
…
…
「中々に有意義だった。皆のお陰だ」
「あぁ、珍しく反対意見も出なかったからな」
「さて、今日の予定はこれで全部だが…ミケ、君はどうする?」
「…何かあるか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
「……」
「まだ時間もある。せっかくだ、出掛けるなり休むなり好きにしてくれて構わない」
「そうか…。ならば適当に過ごさせてもらおう。エルヴィン、お前はどうする」
「よくぞ聞いてくれた!昨日、わざわざナナバが、」
(始まったな。楽しそうで何よりだ)
「ナナバが……(先程見た彼は、随分と楽しげだったな)
「?」
「……(ナナバも嫌な風ではなかった)
「どうした…?」
(どうやら虫除けが遅れてしまったようだ…。俺としたことが)
「おい」
(勿論、彼女に限って万が一など有り得ない。有り得ない、が)
「……」
(さて、どうするか)
「エルヴィン」
「ん?」
「やっと反応したか」
「やっと、とは?」
(気付いていないのか)いや、何でもない」
「……?」
「エルヴィン…」
「なにかな」
「……程々にしておけ」
「止めはしないのか?」
「無論、程度による。と言いたいところだが」
「……が?」
「俺が気付いて止める前に、全て終わらせるだろう?お前ならな」
「はは、買い被りすぎだ」
「…だから、止めはせん。程々であれば何も言うまい」
「そうか…。信頼されていると、そう受け取っておくよ」
「あぁ」
(さて……、虫除けの再考が必要だな)
「エルヴィン。あいつも…、ナナバもお前を信頼している。それだけは忘れるな」
「勿論だ。肝に命じるよ」
「……だったらいい」
「私は恵まれているな」
「やめろ、痒くなる」
「はは」
fin