第1章 幼馴染み。
「そうなんだ、両思いのときはあったんだね。でもさ、私は焦凍くんのこと全然知らない。ただの幼馴染みだし、高校からあまり会ってなかった。」
ピクッと焦凍くんが動いて、私の所まで近寄ってきて手を掴まれた。その姿さえ、様になっていてまるで絵本の中の王子様みたいだった。この幼馴染み、スキル高いんだよな。
「じゃあ、もっと俺のこと知ってくれ。俺は咲のこと、もっと知りてぇ……。」
なんだか、きゅっときたのは母性本能と幼馴染みの様になっているセリフにだろう。なに、この少女漫画的な展開。焦凍くんてこんなこと言う人だったけ??
「じゃあ、話せなかった分の時間を沢山作って幼馴染みぽいことしよう!」
「!、良いのか?」
「勿論、あとからお返事させてください。」
あまり話せなかった時間の分とそして、これからどうしていくのかは何も考えてなかったけれど、今分かったことは私は"はっきりと言えない性格"だと言うことだけだった。
謎に残っているのは、なぜ急に焦凍くんから告白されたのか何故豆大福が美味しいのか。
それは迷宮入りである。
「咲のおすすめの和菓子屋教えてくれ。嫌、この豆大福買ったところ教えてくれ。」
「焦凍くんのお父さんに聞いてみて。轟さん、凄く焦凍くんと話したがっていたから。」
そう言うと顔が嫌そうに歪んだのは、見ないふりをしておいた。また、喧嘩でもしたのだろうか。