第5章 和解のカステラ
・
「焦凍くん……。本当にごめんなさい。」
焦凍くんの家に着くまで昔のことを思い出していた。過去に振られたこともあのあと、避けてしまったことも。
玄関に入れてもらった瞬間、すぐに謝った。
焦凍くんは靴を脱ぎ、入ったが私は靴が脱がないで玄関に立ったままでいる。
「焦凍くんが言ったとおりに、避けていたし最初の方ではあまり会いたくなかった。でもね、焦凍くんとお菓子を食べているとね、む、昔のことを思い出して……。昔の焦凍くんに恋していた時のことも。」
「あぁ。」
「私は、焦凍くんと一緒にお菓子を食べていた時が一番好きで一番、落ち着いていたの。
それがね、大人になった今でも、大好きな時間になったんだ。」
そう言った瞬間、ぽつりぽつりと涙が頬に伝わり最終的には顔を濡らしていく。
なんで泣くのかは分からない。でも、何だか安心するような涙。
「爆豪さんと呑んでいる時に『恋の1つや2つしているだろ。』て言われた時に焦凍くんの顔が浮かんだんだ。。私、今でも焦凍くん好き。」
前の告白とは違って何だか笑顔を作れた。何も答えない焦凍くん。表情は見えない。……やっぱり幻滅したよね。本当に我儘すぎだよ。
「……本当にごめん…!?焦凍くん?」
謝ると何故か抱きしめられて、背中や腰に焦凍くんの温度が来る。ぎゅっと強めに抱きしめられて、体はすっぽり入り込んだ。
「……すまねぇ、なんて言えばいいか分からなかった。」
「だ、だよね!本当に急でごめんね。」