第3章 〇何処にも行かせない(善法寺伊作)
「いてててててて」
「あ、ごめん、痛かった!?」
「ううん大丈夫だよ。こちらこそごめんね、大事な監視の任の途中なのに」
「怪我しちゃったものは仕方ないよ。それに、監視といってもこのルートはほぼ間違いなく敵の通らない道筋だから…………はいできた」
作戦としてはかなり簡潔なものだ。
密書を3名が届ける間、2名が密書を狙う敵を足止めし、残りの2名が万が一に備え、別のルートを監視する。
その監視役が私と伊作というわけだ。
「しっかしこの雨じゃ視界も最悪だね。せっかく伊作との久々の任務なのに」
「これも僕が不運なばかりに……」
「ああ違う違う伊作を責めてるんじゃなくてぇ!」
「分かってるよ。、僕との任務が嬉しくて内心わくわくしてたんでしょう」
「ン゛!!!!そ、そうだけど!!なんでそうはっきり言うかなぁ」
伊作に笑顔で恥ずかしいことを言われ、思わず頬を膨らます。
そんな私を見て伊作はますます笑顔になった。
こいつあとでしばく……。
そんなことを思っていたときだった。
カサッと、少し離れた場所から草木が揺れる音がする。
雨に紛れるほど小さな音だったが私も伊作も見逃さなかった。
その瞬間、突然私の目の前に現れた
、月明かりで怪しく光る小さな刃物。
「ッッッ!!!!!!」
名前を呼ばれそちらを振り向く。
けれど、私へと手を伸ばす伊作の姿が真っ赤に染まり、ぐにゃりと歪んで見えなくなる。
あれ、違う、伊作が赤くなったんじゃない。
赤く染まったのは、私の視界だ。
伊作が私を呼ぶ声が聞こえる。
鉄の擦れる音が響く。
伊作の震える声が聞こえて、私の意識は暗闇へと沈んだ。
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