第1章 ▼騒がしい廊下で(尾浜勘右衛門)
「……え?」
今までなかったその反応に女子たちは固まる。
兵助と八左ヱ門たちも目をぱちくりさせ、そのまま動かない。
「なんか勘違いさせたなら悪いけど、俺君たちのことなんとも思ってないよ。声かけられたから反応しただけ。ていうか誰だっけ君たち」
「え……」
「あと彼女いてもいいとか、それ心広いんじゃなくて、軽いだけだし。そんなこともわかんないの?」
「や、やだなぁ!冗談だよ、冗談!」
「そ、そう、冗談冗談」
勘ちゃんの冷たい言葉を受けて、彼女たちは必死に言い訳をしている。
いや明らかに本気だったよな怒るぞ。
「ふーん、冗談ならいいけど……」
それを聞いた勘ちゃんは冷めた目つきで彼女たちを見つめたあと、私の方を振り返った。
彼の行動に思わず体がびくつく。
それを見た勘ちゃんは優しい微笑みを浮かべ私に近づいてくる。
そのままそっと私の頬を撫で
「俺、にしか興味ないんだ」
そう言って見せつけるように私に口づけた。
きゃああああああ!!!!とこの廊下の至るところで黄色い声が響く。
気づけば私たちは生徒たちの視線を完全に浴びていて、皆私と勘ちゃんを見て顔を真っ赤にしたり、私たちをはやし立てた。
もちろんこれを見たのは先程の女子たちも例外でなく、彼女たちは悔しそうにすぐにその場を走り去った。
……頭が追いつかない。
「んー、、充電させて」
「ま、待って勘ちゃん!?!?こここここ、ここ、学校!廊下!」
「知ってる」
「知ってたらやめなさい!?」
私の声を無視してぎゅうぎゅう抱きつく勘右衛門。
恥ずかしさで死にそうになっている私とは違って平然としている。
どうしようもなくて、兵助と八左ヱ門に助けてアイコンタクト送ったが、2人はニヤニしながらこちらを見るばかりで助けてくれる気配はない。
あいつら後で覚えてろよ。
「あー、本当可愛い。女子に話しかけられてる俺見てヤキモチ焼いてぷるぷるする可愛すぎ」
「し、知ってたの!?!?」
「うん」
「な、なななな…………勘右衛門の……馬鹿ああああああ」
「なぁ、勘右衛門」
「どうしたの、兵助」
「お前さっきの、周りの男に見せつけるためにわざとやっただろ」
「そうだけど?」
「(こいつの方がよっぽど嫉妬深かった)」
fin