第1章 ▼騒がしい廊下で(尾浜勘右衛門)
「……でもムカつくもんはムカつく!!!!!なんなの!?あの女子たちはなんなの!?勘ちゃんの彼女が私だって分かってやってるよね!?」
あ、今ちょっとこっちチラ見した。
「……ねぇ、尾浜くん一緒に写真とろ~?新しいアプリ入れたんだぁ」
「え、良いけど、なんで?」
「記念だよ、きね~ん」
そんな話をしながらその女子たちは、カメラを自分たちに向け、勘ちゃんの腕に抱き、この騒がしい人気の多い廊下で見せつけるようにそれはそれは大胆に胸を押し当てた。
「はいチーズ!」
「きゃ~、ほんと尾浜くん写真写りいいね!」
「そうでもないよ」
「そんなことあるよ~!」
それでも勘ちゃんは平然としていて。
「…………。」
それが悔しくて、こんなこと気にしてしまう自分が情けなくて、八左ヱ門に掴みかかっていた手も力なく落ちた。
それに更に追い討ちをかけるように、彼女たちの言葉は続く。
「ねぇ、尾浜くん。あたしらさ、尾浜くんのこと好きなんだ。」
「私達心広いしさ、彼女いても気にしないから……一緒に遊ばない?」
私の気持ちを弄ぶように、彼女たちは意味のわからないことを平然と言い放った。
勘ちゃんの態度を見て、いけると思ったんだろう。
その顔は自信に満ちていて、私の胸を締め付けた。
「おい、お前らな……」
兵助と八左ヱ門もその言葉に怒りを覚えたようだ。
2人が嫌悪の表情で彼女たちに近づきもの言おうとした。
しかし、それよりも早く
「ごめん、俺君たちに興味ないから」
勘ちゃんが笑顔で、しかし冷たい声色で言い放った。
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