第8章 死んでもボク!【十四松】
あれからしばらくたって……
ここは地獄の甲子園球場。
「バッチコォーイ!」
「「もーいいですぅー」」
釜茹で地獄のあと兄さんたちと無事合流はしたんだけど、刑罰のオンパレード。あっちこっちでボク達は刑を受ける。
ボク、地獄にきても野球出来るなんて知らなかった!
ただ受け止めた瞬間、爆発するから身体がボロボロになっちゃうんだよね。
ヘロヘロのままボクは起き上がる。
「もう一丁ーっ!」
「「勘弁してくださぁーい」」
後ろで一松兄さんとおそ松にいさんがぐったり倒れこんだ。
「まだまだー!!!」
「「じゅ、十四松ぅ……」
そ、それでも……ボクは起き上がる。
今日のノルマはあと1000546球だ。
「やめてくれぇ~!十四松。無理だ、全部なんて受け止められない」
「あ、諦めるってことが大事だよ、ほら見てよ、俺たちもうこんなだよ?」
「だめだよ、兄さん。ボクは頑張るって決めたんだ」
球が飛んでくる。
吹き飛ぶ兄さん達とボクの身体。
身体は全部痛いのに、手も足も頭も全部バラバラになった気がするのに……
死ぬことが出来ない。
それが地獄の苦しみ。
だって、もう死んでいるから。
「楽しい?」
飛んできた球に吹き飛ばされ、ゴロンと倒れ込むと声をかけられた。
「……桜ちゃん?」
重たい瞼を開けると、倒れたボクの目の前に座り込んでボクの顔を覗きこんで笑顔の桜ちゃんだ。
「楽しい?」
「た、楽しくは…ない、けど……やらなきゃ」
「ふーん?
十四松はやっぱり面白いねぇ」
「お、面白い?」
カキーンッ!!!
「……あっ!危ない!」
「大丈夫だよ」
飛んでくるボールをトトトッと追いかけ、まるでゴムボールを取るように軽々とキャッチする桜ちゃん。
着物姿も何のその。
「な!何やってるんですか!?」
球を打っていた鬼が慌てると桜ちゃんはにっこりと笑顔を見せた。
「よぉーし!お返しだー!」
桜ちゃんがポンッ!と球を投げたと思ったら、球は飛んできた球よりも遥かにスピードが速くなり、まるで爆弾のように鬼の下に落下した。
ボカーッンッ!!!と大きな音が鳴る。
「ギャーッ!!!」
鬼は吹っ飛んだ。