第7章 冥土カフェへようこそ【トド松】
「あっぴらこんぴらげー!!!!」
おそ松兄さんの断末魔を聞きながら、ボクはフラフラと岩の上に倒れ込んだ。
もうダメだ。このままじゃ死んじゃう。いや、すでに死んでるんだけど、でも死んじゃう。
ここは針山地獄。ボクたち六つ子は、もう何日間も針に串刺しにされて過ごしていた。一体、地獄に堕ちてからどれくらい経ったんだろう? 身も心もボロボロだ。
「おい、死者は6人いたはずだよな? 1匹足りないぞ?」
鬼の声が聞こえる。
ボクはよろよろと起き上がると、反射的に走り出した。どこにも逃げ場がないのは分かっている。でも、もううんざりだ。ほんのひとときでも、この苦しみから逃れられれば。
「はあっ……はあっ……はあっ……どこか隠れられる場所……」
たまたま視界に入った大きな岩場の影に滑り込む。
「う……だめだ……目が回る……」
ボクはそのまま横になった。こんなところで寝ていたら、すぐにまた叩き起こされて針山に戻されるだろう。分かってはいるけど、体が動かない。向こうから足音が近づいてくるのが分かった。
ああ、ダメだ、鬼たちに捕まる……。
足音はボクのすぐ近くで止まった。
「あの〜、大丈夫ですかぁ?」
可愛らしい女性の声。
ボクは目を開けた。
「あっ、起きた! 分かりますかぁ? 何か飲みますぅ?」
朦朧としながら、頭を持ち上げる。目の前に立っていたのは、フリッフリの黒いメイド服を着た若い鬼の女性だった。
「え、だ、誰……?」
あまりにも地獄に似つかわしくない格好にぽかんとして見つめると、女性はニッコリと笑った。
「わたし、そこのお店で働いてる桜っていうんですぅ! 少し休んでいったらどうですかぁ? 鬼に見つかっちゃう前にどうぞぉ」