第6章 クズキングは死んでもクズ【イヤミ】
ここは地獄でも下の下の下にある暗くジメジメした場所。
ガシャーンッ!!!
重く閉じられた鉄格子の向こうには一人のクズが手枷、足枷のついた状態で寝そべっていた。
その男は世で言うクズ。
世の人の為にならず、生きている間に一体どんな悪事をしたのだろうか?
「あのぉ~すみません、あのぉ~?」
「…………………………」
「あのぉ~……こんにちはぁ~?元気ですか?
元気ですかって死んでるから元気なわけないですよねぇ~?
まぁ挨拶なんで言ってみたんですが……」
「カーッ!何ザンス?その中途半端な声かけは!?元気なわけないんだから聞かないでチョ!?
ったく……大体ミーはまだやり残したことがあるザンス!ここからさっさと出すザンスッ!」
ザンスザンスと連呼する今どき何故か昭和臭が漂うこの男。
地獄に来てから沢山の仕置きを受けに受けているにも関わらず、どこへ行っても脱走を図るものだから、仕置きの合間はすべてここの牢屋へと閉じ込めておかねばならなかった。
「はぁ、結構元気じゃないですか……まぁ出たいのはわかりますよ。出さないけど」
ぶっちゃけ相手するのめんどくさい、と思いながらつぶやいた鬼。
新人なのにいきなり面倒な相手を上司に押し付けられて、こちらもいい迷惑だとため息をついた。
「ん?チミ、今まで見なかった鬼顔ザンスね?さては押し付けられたザンスか?」
押し付けられたって……自分で言うセリフじゃないと思う。
そう思ったが、つっこむわけでもなく。
「そうなんです……簡単だからって頼まれて来てみればザンスザンス五月蝿いし、実際まともな人が牢屋に入ってるわけないですよね?てか、そもそも地獄にまともな奴なんていませんよね~?ハハッ。
あ、名前は桜と言います。
今日からよろしく」
「なんか変な奴が来たザンス……」
桜に興味を示したのか、振り向いた男。
書類を見ると名前はイヤミ。
詐欺、窃盗、盗み食い、泥棒……何でもござれ。
ただ、殺人などの凶悪犯罪はしていなかった。
「貴方に言われたくはないです……ええと、イヤミさん?ええと罪状は……ふむふむ。なるほど小悪党ですね」
「シェッ?!チミ、初対面のくせにさっきから失礼ザンスよっ!?」
それが桜とイヤミの出会い。