第5章 死んだらキミに恋をする【一松】
そんなこと聞かなくても見りゃ分かるだろ……? めちゃくちゃ気持ちよかった……。
おれは自分の白装束で桜の手を拭いてやると、改めて彼女を見た。
初めて乳を触らせてくれた女、初めておれのを握ってくれた女、初めておれが出したものを手で受け止めてくれた女。
顔も可愛いし、明るい。なのに、おれみたいなクズにも普通に接してくれる。
くそっ、好きになりそう……て言うか、もう好き……すごく好き……。
おれは彼女の足元を見ながら、ぼそぼそと聞いてみる。
「あのさ……あんたって死ぬ前はカレシいたの……?」
「カレシ? あー……いたけど……」
いたんだ。カレシ持ちかよ、くそっ。
桜は、苦笑した。
「でもね、カレは私が死んでからすぐに新しいカノジョを作ったよ」
「そうなの……?」
おれは顔を上げる。
「うん、私は死んでからもカレと離れたくなくて、現世にフラフラ留まってたの。でも、カノジョを作ったのを見て、もういいやって思った。『もう未練はないや、幸せになってね』という気持ちになって。そしたら、ここに来たの。まっ、地獄だから来てよかったのか分からないけどねっ」
彼女はアハハと笑う。
「…………」
現世に留まるほどカレシのことが好きだったのか。別れるのは辛かっただろうに……。
「ちょ、ちょっと! そんなしんみりしないでよ! 本当にもうカレのことはいいの。それに地獄に堕ちちゃったけど、辛いことばかりじゃないよ。こうやって、あなたにも出会えたし……」
おれは、驚いて彼女を見た。
あなたにも出会えたし? それはどういう意味だよ? 期待していいの?