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おそ松さん〜地獄の沙汰もマツ次第〜(R18)

第5章 死んだらキミに恋をする【一松】


おれは桜の手を取った。
「あのさ……おれと付き合ってほしいって言ったら……あんた、怒る……?」

「えっ?」
桜が目を丸くする。

「そ、その、あんなことしちゃったのも何かの縁だし、カレシのことは忘れて、おれと付き合ってみるとか……だめですよね……」

目を逸らして言うと、桜がくすっと笑う声が聞こえた。

「私なんかでいいの……?」

当たり前だ。こくこくと頷く。自然と握った手に力が入る。

「す、好き……かも……おれと……付き合って……」

今度はちゃんと目を見て伝える。

おれにしてみたら、一生分の勇気を使い果たすぐらいの告白だ。死んでるから使い果たすも何もないけど。

桜は微笑みながら頷いた。

マジか……。初めてのカノジョだ。まさか死んでから地獄でカノジョができるなんて。


おれは恐る恐る桜の背中に腕を回して抱き寄せる。すごい、恋人だから拒否されない。死んでいても温かくていいニオイ。確かに腕の中に彼女の存在を感じる。

「ねぇ、キスしようよ……」
桜の甘い声。

誘われるように、おれはゆっくりと可愛い唇に口づけた。

ああ、桜の唇、柔らかい……柔らかすぎて逆に地獄……。

チュッチュッと音を立てながら、おれたちは何度もキスを続ける。


「あのう、乳首ちぎられる地獄を待ってるんですけど、順番はまだですかー?」

岩の向こうから男の死者が覗いた。

「うるせぇ! 邪魔すんな! ハンコなら押してやるよ! ほーら、特別にご褒美だぁっ!」

おれは片手でハンコを押す。

「やった! ラッキー!」
男が大喜びで岩の影に消えると、おれは桜を押し倒した。


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